今月の私は、本当に「運」が良い。有り難い。嬉しい。楽しい。

夜の「鹿鳴館」では、まだ一つにもならない子供を、芸者ゆえに手放して、伯爵家に嫁入りし、、、立派な若者になった息子と劇的な再会、そして告白、、、そして、別れ、、と、三島先生の悲劇の世界を演じているのだが、子を持ったことのない私が、体験しても居ない「母」を、芝居を離れて体験させられている。
そんな私の感情が、お客さまにどう伝わっているのかは、まったく解らない。それが良いことなのかどうかも、自分では解らない。
でも難しい台詞の真っ直中にいて、「母親」の感情を掻きむしられるのは女優冥利に尽きる。

昼の「婦系図」では、悲劇のヒロイン、お蔦の姉さん芸者。
「別れろ、切れろ」と二人の中を裂いた酒井先生の愛人役だ。
酒井先生の美しい可愛いい天使のようなお嬢さま「妙子」さまと出逢ってしまう。
こちらは、母とは名乗れずに苦しむわけだが、最後の最後に、お蔦に何もかも打ち明ける。打ち明けるまでに、母と云えない苦しさ、見事に成長した娘の眩しさ、愛おしさにこれまた心を掻きむしられる。
そんな筈ではなかった、と思っていたのに、、、。
だって、妙子役の紅 貴代さんとは、何十年という付き合いだ。娘、よりは姉妹なのに、、、ものの見事に我が子になってしまうのだ。芝居を感じさせない可愛さで、私の感情を掻きむしってくれる。幸せをつくづく感じる今月の芝居だ。

それにしても、泉 鏡花作品も、三島由紀夫作品も、私の役は芸者&元芸者。
芸者故に、子供を手放し、子を慕って泪する。

やっぱり新派。
花柳界あっての新派。
花柳界こそ、日本独特の文化なのだと思うんです。

男性の皆さん、遊んで下さい。粋に、楽しくカッコ良く。芸者さんにもてて下さい。
奥さまがご一緒でもかまいません。日本の文化を守るんですもの。

そして大勢さん連れだって、新派の芝居にお出かけ下さい。

昔の日本人はこんなにも、つましく、細やかに生きて居たんだな、と愛おしんで下さいませ。
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by funny-girly | 2008-06-24 02:01 | 芝居

水谷八重子 タワゴト

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