2008年 11月 12日
ガタ、、、
正しくは、緒形 拳さんの仏前に、
手を合わせに行ったんですが、
そうは思いたくなかったんです。
ですから、ガタに会いに行ったんです。
素敵なお家でした。
ガタが居ないのが不思議な気がするお家でした。
秋の草花が咲き乱れて、荒々しい、、、でも、どこか暖かい陶器が一杯、
そこら中に置いてありました。とってもガタらしかった。
奥さまがまるでガタの留守を詫びるかのように、
迎えて下さいました。
お線香を上げて、手を合わせたのに、まるで実感がない。
目の前に、ガタの写真を見ても、お骨を拝んでも、、、実感がない。
私がご無沙汰をしているだけで、ガタはいるんだって思ってしまいました。
こちらに、、、、って、奥さまがお茶とお菓子を出して下さった。
ハッピーチャンの連れて来た子猫が、
ソファに敷いたムートンの毛に埋もれて、グッスリ。
昔は犬派だったのに、すっかり猫派になって、、、と奥さま。
無心に寝てる子猫は、ガタが元気だったら、
映画デビューをしていたはず、、と、ハッピーチャン。
「ハリーとトント」を撮りたかったと云う。
その為に、ハッピーチャンがインターネットで探した子猫なのだそうだ。
「シジミ」って名前だそうな。
シジミを指先でつついた。眠そうに寝返りを打ちながら、
小さな手を指に掛けてくる。
急に悲しくなった。ヤバイな、、、その時、奥さまが、
「ガタの部屋、見て下さる?」
二階に連れて行って下さった。
!?、、、子供部屋、、、大きな子供部屋、ガタの部屋。
ベランダの硝子に、機械式の不思議な、小さな硝子窓が着いている。
首輪に、曰くありげなプレートを下げた、立派な虎猫がいた。
良い面魂の虎猫だった。ガタの猫だと云う。
お愛想に手を伸ばそうとしたら「フン」って顔して、
小さな硝子窓に近寄った。硝子窓がスーッと開いて、
虎猫は悠然と出て行った。ガタの自慢そうな顔が見えた。
奥さまと笑ったけれど、掛け替えのない人を失ったんだと自覚した。
新国劇に招かれて「沼津兵学校」で、
ガタのお嫁さんになってしまった高倉典江さんの役を、
私が代わった。ガタの相手役だった。
ガタの食べるあんころ餅にとろろ昆布を混ぜたりイタズラをした。
仕返しに、私の楽屋に駕籠が入ってきた。
日生で「ボーイング・ボーイング」をやった時、
ガタが一番先にブロンドの髪に染めてきた。
舞台稽古の始まる前、「15分前のベル鳴った?」と聞くと、
金髪のガタが楽屋から現れて「ンヤ、二丁はまだだよ」
なんと、下着一丁のガタの下着は、、、越中だった!!!
フランスのブルバールをやる二人は、
新国劇と新派だったのだ。
大きな子供部屋の主がいたら、、、、と、、、
新国劇は今はない。
ガタが仕えた師匠、辰巳先生も島田先生も、、、いない。
生きてる限り、頑張るか!!!ともう一度、ガタに手を合わせた。
スターになりそこなったシジミが無心に眠っていた。
by funny-girly
| 2008-11-12 02:20
| 無