ガタ、、、

ガタに会いに行きました。

正しくは、緒形 拳さんの仏前に、
手を合わせに行ったんですが、
そうは思いたくなかったんです。

ですから、ガタに会いに行ったんです。

素敵なお家でした。
ガタが居ないのが不思議な気がするお家でした。

秋の草花が咲き乱れて、荒々しい、、、でも、どこか暖かい陶器が一杯、
そこら中に置いてありました。とってもガタらしかった。

奥さまがまるでガタの留守を詫びるかのように、
迎えて下さいました。
お線香を上げて、手を合わせたのに、まるで実感がない。
目の前に、ガタの写真を見ても、お骨を拝んでも、、、実感がない。

私がご無沙汰をしているだけで、ガタはいるんだって思ってしまいました。
こちらに、、、、って、奥さまがお茶とお菓子を出して下さった。

ハッピーチャンの連れて来た子猫が、
ソファに敷いたムートンの毛に埋もれて、グッスリ。

昔は犬派だったのに、すっかり猫派になって、、、と奥さま。
無心に寝てる子猫は、ガタが元気だったら、
映画デビューをしていたはず、、と、ハッピーチャン。

「ハリーとトント」を撮りたかったと云う。
その為に、ハッピーチャンがインターネットで探した子猫なのだそうだ。
「シジミ」って名前だそうな。
シジミを指先でつついた。眠そうに寝返りを打ちながら、
小さな手を指に掛けてくる。
急に悲しくなった。ヤバイな、、、その時、奥さまが、
「ガタの部屋、見て下さる?」
二階に連れて行って下さった。
!?、、、子供部屋、、、大きな子供部屋、ガタの部屋。

ベランダの硝子に、機械式の不思議な、小さな硝子窓が着いている。
首輪に、曰くありげなプレートを下げた、立派な虎猫がいた。
良い面魂の虎猫だった。ガタの猫だと云う。

お愛想に手を伸ばそうとしたら「フン」って顔して、
小さな硝子窓に近寄った。硝子窓がスーッと開いて、
虎猫は悠然と出て行った。ガタの自慢そうな顔が見えた。

奥さまと笑ったけれど、掛け替えのない人を失ったんだと自覚した。

新国劇に招かれて「沼津兵学校」で、
ガタのお嫁さんになってしまった高倉典江さんの役を、
私が代わった。ガタの相手役だった。
ガタの食べるあんころ餅にとろろ昆布を混ぜたりイタズラをした。
仕返しに、私の楽屋に駕籠が入ってきた。

日生で「ボーイング・ボーイング」をやった時、
ガタが一番先にブロンドの髪に染めてきた。

舞台稽古の始まる前、「15分前のベル鳴った?」と聞くと、
金髪のガタが楽屋から現れて「ンヤ、二丁はまだだよ」
なんと、下着一丁のガタの下着は、、、越中だった!!!
フランスのブルバールをやる二人は、
新国劇と新派だったのだ。

大きな子供部屋の主がいたら、、、、と、、、

新国劇は今はない。
ガタが仕えた師匠、辰巳先生も島田先生も、、、いない。

生きてる限り、頑張るか!!!ともう一度、ガタに手を合わせた。
スターになりそこなったシジミが無心に眠っていた。
by funny-girly | 2008-11-12 02:20 |

水谷八重子 タワゴト

by funny-girly
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